宗教法人が行うペット葬祭事業が、法人税法2条13号、同法施行令5条1項各号所定の収益事業に該当するとして受けた決定処分及び無申告加算税賦課決定処分について、ペット葬祭事業は宗教的行為であり収益事業にあたらないと主張してその取消を求めた事案 (平成17・3・24名古屋地裁)平成16(行ウ)4

宗教法人が行うペット葬祭事業が、法人税法2条13号、同法施行令5条1項各号所定の収益事業に該当するとして受けた決定処分及び無申告加算税賦課決定処分について、ペット葬祭事業は宗教的行為であり収益事業にあたらないと主張してその取消を求めた事案 (平成17・3・24名古屋地裁)平成16(行ウ)4 法人税額決定処分等取消請求事件 [ペット葬祭事業は収益事業に該当するとして棄却された事例]


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平成17年3月24日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成16年(行ウ)第4号法人税額決定処分等取消請求事件
口頭弁論終結の日 平成16年12月15日


          判         決

主         文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。


事実及び理由
第1 原告の請求

被告が,原告の下記各事業年度について,平成14年5月20日付けでした法人税決定処分及び無申告加算税賦課決定処分(ただし,平成14年10月18日付け異議決定及び平成15年10月28日付け裁決によって一部取り消された後のもの)を取り消す。

(1) 平成9年3月期(平成8年4月1日から平成9年3月31日まで)
(2) 平成10年3月期(平成9年4月1日から平成10年3月31日まで)
(3) 平成11年3月期(平成10年4月1日から平成11年3月31日まで)
(4) 平成12年3月期(平成11年4月1日から平成12年3月31日まで)
(5) 平成13年3月期(平成12年4月1日から平成13年3月31日まで)

第2 事案の概要

本件は,宗教法人である原告が,死亡したペット(愛玩動物)の飼い主から依頼を受けて葬儀や供養等を行う(以下「ペット葬祭」といい,その事業を「ペット葬祭業」という。)などして,金員を受け取ったことに対し,被告から,ペット葬祭業は法人税法(以下,条文を示すときは単に「法」という。)2条13号及び同法施行令(以下「施行令」という。)5条1項各号所定の収益事業に当たるとして,前掲各事業年度(以下「本件各事業年度」と総称する。)における法人税の決定処分及び無申告加算税賦課決定処分(以下,両者を併せて「本件課税処分」という。)を受けたため,ペット葬祭業は宗教的行為であって収益事業に当たらないなどと主張して,同処分(ただし,異議決定及び審査裁決により一部取消後のもの)の取消しを求めた抗告訴訟である。

1 前提事実(当事者間に争いのない事実,証拠によって明らかな事実等)

(1) 原告(甲22)

原告は,嘉暦元年(1326年)ころ,慈妙上人によって開山されたと伝えられる古刹であり,昭和44年10月28日,比叡山延暦寺を総本山とする宗教法人天台宗を包括法人として設立された宗教法人であって,現在,その代表役員には,住職を兼任するA(以下「A」という。)が就任している。

(2) ペット葬祭業の概要(甲16,22,乙5ないし12)

原告は,「B動物霊園」の名称で,約3000坪の境内に,ペット用の火葬場,墓地,納骨堂,待合室等を設置して,昭和58年ころから,ペット葬祭業を執り行っているところ,その概略は,以下のとおりである。

ア 死体の引取り
希望する飼い主に対し,引取車を派遣して死亡したペットを原告まで運搬する。

イ 葬儀
火葬場に隣接するペット専用の葬式場で,人間用祭壇を用い僧侶が読経して行う。

ウ 火葬
以下の3種類がある。
(ア) 合同葬 葬儀終了後,その日のうちに原告により合同火葬場にて合同火葬される。
(イ) 一任葬(個別葬) 葬儀終了後,立会葬のない時間に原告により個別火葬場にて単独火葬される。
(ウ) 立会葬 葬儀終了後,飼い主らが待合室にて待機するうち,個別火葬場にて単独火葬される。

エ 埋蔵・納骨
原告の境内に,ペット専用の合同墓地,個別墓地,納骨堂を設置し,飼い主らの希望に従って利用することができる。

オ 法要
毎月17日には,合同の法要がなされるほか,希望者には,位牌を祭り,初七日法要や七七日法要を行う。

カ その他
希望者には,塔婆,ネームプレート,位牌,骨壺,袋,石版及び墓石を頒布している。

(3) 人間用の墓地管理等(甲3,乙13)

原告は,愛知県G市○○町○○○番地○に「C」という名称の霊園を設置して,利用者から管理料を収受し,また墓石の販売を行っている(以下,ペット葬祭業と併せて「ペット葬祭業等」という。)。

(4) 本件課税処分から本訴提起に至る経緯(甲1及び2の各1ないし5,3ないし10)

被告は,原告に対し,平成14年5月20日付けで,本件課税処分を行った(同日付けで源泉徴収に係る所得税の納税告知処分及び重加算税賦課決定処分並びに源泉徴収に係る不納付加算税賦課決定処分も行われているが,本訴の対象となっていないので,以下においては割愛する。)。

これに対し,原告は,平成14年7月19日,被告に対して異議を申し立てたところ,被告は,同年10月18日,本件課税処分のうち,平成13年3月期(平成12年4月1日から平成13年3月31日まで)の無申告加算税賦課決定処分の全部並びにそれ以外の法人税決定処分及び無申告加算税賦課決定処分の一部をそれぞれ取り消し,その余の申立てを棄却する旨の異議決定をした。

さらに,原告は,平成14年11月15日,国税不服審判所長に対して審査請求をしたところ,同審判所長は,平成15年10月28日,平成12年3月期の法人税決定処分及び無申告加算税賦課決定処分の一部を取り消し,その余の審査請求を棄却する旨の裁決をした。以上の経緯は別表1記載のとおりである。

原告は,平成16年1月20日,本訴を提起した。

(5) 関係法令等の抜粋

ア 法人税法
(定義)
2条13号 収益事業 販売業,製造業その他の政令で定める事業で,継続して事業場を設けて営まれるものをいう。
(納税義務者)
4条1項 内国法人は,この法律により,法人税を納める義務がある。ただし,内国法人である公益法人等…については,収益事業を営む場合……に限る。

イ 施行令
(収益事業の範囲)
5条1項 法第2条第13号(略)に規定する政令で定める事業は,次に掲げる事業(その性質上その事業に付随して行われる行為を含む。)とする。
  1号 物品販売業(略)のうち次に掲げるもの以外のもの
  (中略)
  5号 不動産貸付業のうち次に掲げるもの以外のもの
  (中略)
    ニ 宗教法人法(略)第4条第2項(略)に規定する宗教法人又は民法

第34条の規定により設立された法人が行う墳墓地の貸付業
  (中略)
  9号 倉庫業(寄託を受けた物品を保管する業を含むものとし,第31号の事業に該当するものを除く。)
  10号 請負業(事務処理の委託を受ける業を含む。)のうち次に掲げるもの以外のもの
  (以下略)

ウ 法人税基本通達(以下「本件通達」といい,個別の条項を示すときは,末尾の番号を付加して「本件通達10」のようにいう。)
    (宗教法人,学校法人等の物品販売)
    15−1−10 宗教法人,学校法人等が行う物品の販売が令第5条第1項第1号《物品販売業》の物品販売業に該当するかどうかについては,次に掲げる場合には,それぞれ次による。
     (1) 宗教法人におけるお守,お札,おみくじ等の販売のように,その売価と仕入原価との関係からみてその差額が通常の物品販売業における売買利潤ではなく実質は喜捨金と認められる場合のその販売は,物品販売業に該当しないものとする。ただし,宗教法人以外の者が,一般の物品販売業として販売できる性質を有するもの(例えば,絵葉書,写真帳,暦,線香,ろうそく,供花等)をこれらの一般の物品販売業者とおおむね同様の価格で参詣人等に販売している場合のその販売は,物品販売業に該当する。
 (以下略)
    (非課税とされる墳墓地の貸付け)
    15−1−18令第5条第1項第5号ニ《非課税とされる墳墓地の貸付業》の規定により収益事業とされない墳墓地の貸付業には,同号ニに規定する法人がいわゆる永代使用料を徴して行う墳墓地の貸付けが含まれることに留意する。
    (倉庫業の範囲)
    15−1−26令第5条第1項第9号《倉庫業》の倉庫業には,寄託を受けた物品を保管する業が含まれるから,手荷物,自転車等の預り業及び保護預り施設による物品等の預り業(貸金庫又は貸ロツカーを除く。)もこれに該当する。
     (注) 貸金庫又は貸ロツカーは,同項第4号《物品貸付業》の物品貸付業に該当する。
    (請負業の範囲)
    15−1−27令第5条第1項第10号《請負業》の請負業には,事務処理の委託を受ける業が含まれるから,他の者の委託に基づいて行う調査,研究,情報の収集及び提供,手形交換,為替業務,検査,検定等の事業(略)は請負業に該当するが,農産物等の原産地証明書の交付等単に知つている事実を証明するだけの行為はこれに含まれない。
    (請負業と他の特掲事業との関係) 
    15−1−29公益法人等の行う事業が請負又は事務処理の受託としての性質を有するものである場合においても,その事業がその性格からみて令第5条第1項各号《収益事業の範囲》に掲げる事業のうち同項第10号以外の号に掲げるもの(以下…「他の特掲事業」という。)に該当するかどうかにより収益事業の判定をなすべきものであるとき又は他の特掲事業と一体不可分のものとして課税すべきものであると認められるときは,その事業は,同項第10号《請負業》の請負業には該当しないものとする。
    (神前結婚等の場合の収益事業の判定)
    15−1−71宗教法人が神前結婚,仏前結婚等の挙式を行う行為で本来の宗教活動の一部と認められるものは収益事業に該当しないが,挙式後の披ろう宴における飲食物の提供,挙式のための衣装その他の物品の貸付け,記念写真の撮影及びこれらの行為のあつせん並びにこれらの用に供するための不動産貸付け及び席貸の事業は,収益事業に該当することに留意する。

2 本件の争点

原告の営むペット葬祭業等が法2条13号,施行令5条1項各号所定の収益事業に該当するか。

3 争点に関する当事者の主張

(1) 被告の主張

原告の営むペット葬祭業等は,法人税法2条13号,施行令5条1項各号所定の収益事業に該当する。

ア 公益法人に対する課税制度

内国法人は,法人税法の定めるところにより法人税を納める義務がある(法4条1項本文)が,内国法人である公益法人等については,収益事業を営む場合に限って法人税を納める義務があり(同条1項ただし書),収益事業から生じた所得以外の所得及び清算所得は非課税とされる(法7条)。

ところで,公益法人等に対する課税制度の基本的な考え方は,以下のとおりである。すなわち,元来,公益法人が営利的事業を行うのは,その本来の目的たる公益事業を遂行するためのやむを得ない手段たるべきであるにもかかわらず,それが本来の事業遂行を賄ってなお余りあるという段階に至れば,それは公益法人の行う営利的事業としては行き過ぎであるといえるし,一般の営利法人の行う事業との間に,一方は法人税が非課税であり,一方は課税されるという著しい不権衡を生ずるに至る。そこで,公益法人に対する法人税課税問題が台頭するに至ったが,その際,課税方法として,個々の公益法人の事業の内容により,その事業の公共性が強いときはたとえ収益事業を行っても課税せず,逆に公共性に乏しいときは事業全部に課税するという方法も考えられた。しかし,すべての公益法人についてその事業を精査し,公共性の強弱を判定することは不可能に近いことから,シャウプ勧告を受けた昭和25年の法改正においては,すべての公益法人を一律課税法人とし,その収益事業から生ずる所得に対してのみ法人税を課税することとなったものである。

そして,法2条13号によれば,収益事業とは,販売業,製造業その他の政令で定める事業で,継続して事業場を設けて営まれるものとされているところ,その具体的内容は,施行令5条1項に物品販売業をはじめとする33の事業をもって収益事業としている(同項1号ないし33号。以下,同項に掲げられた各事業を「特掲事業」という。)。これは,公益法人等に対する課税制度の趣旨に則って,一般事業者(営利企業,民間企業)との競合関係に立つと思われる事業を特に掲げたものである。また,同項本文括弧書きは,公益法人等がこれらの収益事業を営むに当たり,その性質上その事業に付随して行われる行為は,それぞれの収益事業に含まれると規定している。

イ 特掲事業該当性の判断基準

本件においては,原告が営むペット葬祭業等が,特掲事業に該当するか否かが問題となるところ,その判断に当たっては,まず,問題となる当該事業が,法施行令5条1項各号に掲げる各事業の法的な定型的な特徴(この点については,民法や商法といった私法体系における理論が基礎に置かれる。)を備えたものでなければならないことはいうまでもないが,さらに,前記の趣旨により,税法独自の判断が必須であり,当該事業が一般事業者が営む事業との関連から課税対象とするにふさわしいものか否かという観点からの判断を欠くことができない。

そのためには,①問題とされる当該事業と一般事業者が行っている事業との類似性の有無・程度,②明文の規定によって特掲事業から除外されていたり,また,特掲事業として掲げられていないため,非課税とされている事業との関係,③当該事業で提供されるサービス・物品等の性質・態様等の諸般の事情を,国民の社会的・文化的意識を基礎とする社会通念に照らし,また課税の公平性という制度趣旨を勘案して,総合的に判断するのが相当である。

ウ 原告の営むペット葬祭業等の特掲事業該当性

原告が営むペット葬祭業等は,以下のとおり,①葬祭(葬儀・火葬),②法要,③遺骨処理とその管理(納骨堂,墓地管理),④オプションとなる物品販売(塔婆,プレート,骨壺,袋,位牌,石版,墓石),⑤ペットの死体引取りの各事業に分類できるところ,①は請負業(施行令5条1項10号)に,③は倉庫業(同項9号)及び請負業に,④は物品販売業(同項1号)に,②及び⑤は付随事業(同項括弧書き)にそれぞれ該当する。

(ア) 原告の営むペット葬祭業等の内容
a 原告は,境内に葬儀場,火葬場を設置して,ペットの火葬,葬儀業務を取り扱っているところ,これには,前提事実(2)で示すとおり,合同葬,一任葬及び立会葬の3種類のメニューが用意されており,各メニューや対象動物の大きさに応じて,一定額の料金(別表2参照)が設定されている。なお,原告は,希望者からの依頼に応じて,ペットの死体を引き取って斎場まで運搬するサービスを3000円で提供したり,葬儀後,毎月17日に法要を行うなどしている。

また,原告は,境内に墓地及び納骨堂を設置し,遺骨処理業務を行っているところ,墓地については,ペット専用の合同墓地と個別墓地が用意されており,このうち前者については,原告に葬儀の依頼をした利用者については無料とされているものの,後者については,年間2000円の管理費と9年ごと(3年ごとの更新3回)に継続利用料(平成12年現在で1万円)の支払が必要とされているほか,墓石の購入費用も必要となる。

納骨堂については,使用許可料3万5000円のほか,年間2000円の管理費が必要であり,墓地と同様の更新条件が設定されている。さらに,原告は,ペット葬祭業に関連して,塔婆,ネームプレート碑,位牌,骨壺,袋,石版及び墓石の販売を行っている。

b 上記のペット葬祭業のほか,原告は,愛知県蒲郡市内に,「C」という名称の人間専用墓地を設置し,利用者から管理料(年間3000円)を徴収して管理しているほか,同霊園事業に関連して墓石の販売等も行っている。

(イ) 収益事業の定型的特徴の具備

a 葬祭について

ペット葬祭業は,読経その他の供養・追悼の儀式,死体の焼却及び拾骨といった一連の労務・サービスの提供であるから,法的には,仕事の完成及びこれに対する報酬の支払を要素とする「請負」若しくは「準委任」として構成できる。そして,原告の前記業務内容には,読経のみならず,追悼の儀式や死体の焼却及び拾骨といった業務が広く含まれており,その業務を全体としてみるならば,葬祭一般についての事務の取扱いと評価できるから,その労務・サービスの性格は,国民の社会・文化的意識に照らしても,寺社がこれを取り扱うことにこそ価値があると一般に理解されているとはいえない。

このことは,ペット葬祭が一般事業者でも広く取り扱われていることからも明らかである。加えて,原告の事業においては,一般事業者と同様,合同葬等の葬祭メニューや対象動物の大きさに応じた料金を設定しているが,かかる扱いは,労務ないしサービスの内容が料金に反映されていることの現れであり,また,設定された料金も,ほぼ一般事業者と同様であることからすれば,原告が行うペット葬祭業務につき授受される経済的利益は,原告が提供する労務・サービスに対する対価の性質を有すると解される。

よって,原告の行うペット葬祭業は,請負業の特質を備えているばかりか,その事業形態は一般事業者が営むそれと極めて類似し,しかも,業務内容や態様等に照らして,賽銭や喜捨と同列に見るべき事情も存しないから,課税対象とするにふさわしいと評価できる。

この点について,原告は,読経,火葬,法要は僧侶自身の宗教行為又はその前提行為ないし付随行為にほかならず,仕事を完成させるために行うものではない旨主張するが,民法上の請負の目的である「仕事」は無形的なものでもよく,本件でも,儀式及び火葬等がつつがなく執り行われるという結果を生むことが前提となっているから,それを「請負」と構成することに何ら支障はないし,宗教行為であることを理由に,当該行為を請負業と構成することが妨げられるわけではない。

また,原告は,利用者から受け取る金銭が「布施」であって対価性を欠く旨主張するが,原告のパンフレットには,明確に「料金表」と表示され,一般事業者のものと同様,葬祭業務のメニューや動物の大きさに応じた金額が記載されているなど,その体裁が一般事業者によるものに酷似していること,料金表にそれが目安である旨の記載もないことなどからすれば,原告が提供する労務ないしサービスの対価であることは明らかである。

b 遺骨の処理について

原告は,火葬したペットの遺骨を,利用者の依頼に応じて,設置している納骨堂において保管・管理したり,墓地の利用者の依頼に応じて墓地を管理し,利用者から一定額の経済的利益を享受している。

ところで,利用者の依頼により物である「遺骨」を納骨堂に保管してこれを管理することは,寄託物の引受けを業とする倉庫業の典型的な特徴を備えているばかりか,原告においては,納骨堂の利用及び管理を利用するにつき一定の金額を設定しており,これが保管・管理の対価であることは明らかである。しかも,一般事業者においても,原告と同様の遺骨の保管・管理業が営まれていることをも考慮すれば,原告の上記事業は,課税対象とするにふさわしいと評価できる。

この点について,原告は,本件では,①焼骨の永久保管が前提となっていること,②焼骨の出し入れが予定されていないこと,③寄託期間に応じて費用が決定されていないこと,④原告の収受する管理費の実体は「護持会費」であり,対価性のない喜捨金であることなどを主張する。しかしながら,納骨堂の利用期間である9年を経過すれば,更新料の支払がない限り合同墓地に改葬されるから,この更新料の支払が納骨堂の継続利用の前提条件となっていることは明らかであり,永久保管が前提であるとはいえないこと,管理費用も3年更新で年間2000円とされていること,倉庫に預けられた物品の出し入れは,寄託契約の要素となっていないこと,原告のホームページで護持会費を請求しないと明言していることなどからすれば,上記主張はいずれも事実と異なる。

なお,人の遺骨の墓地への埋蔵は,施行令5条1項5号ニの「墳墓地の貸付業」に当たり,収益事業には該当しないが,ペットの遺骨処理は,同号ニには当たらない。なぜなら,税法上「墳墓地」の意義は明定されていないが,墓地,埋葬等に関する法律(以下「墓地法」という。)2条4項は,「死体を埋葬し,又は焼骨を埋蔵する施設をいう」と規定していることからすれば,施行令において,収益事業から除かれる墳墓地の貸付けは,人間に関するものに限られると解されるし,ペットの遺骨処理においては,人の遺骨の埋蔵のような高い公共性・公益性を見出し難いからである。

c 物品販売について

原告は,ペット葬祭に関連して,塔婆,プレート,骨壺,袋,位牌,石版,墓石を販売しているところ,かかる事業が物品の売買という販売業の定型的特徴を備えており,これに応じて原告が享受する経済的利益が物品の対価の関係に立つことは明らかである。加えて,上記物品の販売は一般事業者においても行われていることからも,原告の営む上記各物品の販売は,お札・おみくじの頒布と異なり,施行令5条1項1号の「物品販売業」に該当する。

d 法要及び死体の引取りについて

法要は,葬祭のアフターケアの部分であって,請負業である葬祭の付随的事業活動といえるし,また,死体の引取りは,葬祭を執り行うに先立って,死体を回収するサービスであって,その準備行為といえるので,葬祭の付随的事業活動に該当するというべきであるから,収益事業に当たる。

e 人間用の墓地管理等について

原告は,人間用の墓地を設置し,利用者からの依頼を受けて管理し,その対価としてあらかじめ定められた料金を得ているところ,これは通常の霊園墓地経営と同様であるから,施行令5条1項10号の「請負業」に該当する。

エ 原告の主張に対する反論

この点について,原告は,①宗教法人や僧侶の行うペット葬祭は,非課税とされる人の葬祭と同様の宗教的意義を有し,対価性を欠く,②非課税とされる針供養や人形供養との比較からも,ペット葬祭を収益事業として取り扱うことは許されない,③もともと,宗教法人等が本来の公益事業として行ってきた行為であっても,一般事業者がビジネスチャンスと見て参入した場合に課税対象となるのは不当である,④墳墓地の貸付業の非課税を定めた本件通達18や,神前結婚式等の場合の収益事業の判定に係る本件通達71に照らせば,法は,収益事業の判定に当たって,「一般事業者が同一ないし類似の事業をしているか」や「競合関係に立つか」などを考慮することなく,本来の宗教活動の一部と認められるか否かを唯一の判断基準としていると解されるなどと主張する。

しかしながら,以下のとおり,原告の上記主張は相当でない。

(ア) 宗教的意義について

公益法人等の収益事業に対する課税に当たっては,主として一般事業者との競争関係の有無や課税上の公平の維持などが考慮されるべきであって,宗教的意義といった公共性の有無やその強弱だけで,その課税の是非についての判断が行われるものではないから,宗教的意義の有無等はその解釈に影響しない。

そして,原告の営むペット葬祭業の業務内容は,人の葬祭と異なり,読経その他の供養,追悼の儀式,遺体の焼却及び拾骨などを含む一体的なサービスであり,その事業形態は,一般事業者が営む葬祭業と極めて類似しているから,業務内容の一要素である供養の部分の宗教的意義を強調するのは,公益法人等に対する課税制度の趣旨に照らし,相当でない。

すなわち,人の葬祭の場合,葬祭を執り行おうとする者は,葬儀会社に依頼することが少なくないが,その場合でも,当該業者が一括して処理するのではなく,式場の手配等を葬儀会社が取り扱うものの,火葬は地方公共団体等が運営する火葬場,また,読経等の供養は寺社等というように,その業務内容が分断されており,宗教法人が一括して執り行う例は見当たらないようである。したがって,その場合に,宗教法人が取り扱う事業は,読経等の供養のみとなるが,これについては,寺社等がこれを取り扱うことにこそ価値があると一般に理解されており,一般事業者による類似事業は存在しない。

(イ) 非課税事業との比較について

a 針供養・人形供養については,その供養に伴って金銭の授受を伴うことがあるため,これを外形的に見れば,ペット葬祭と同様に,「請負」業に該当する可能性があるが,一般的に,針供養等を事業として行っている一般事業者は見当たらないようであるし,これらについて授受される金銭についても,明確な料金設定はされていないことが多い。加えて,国民の社会・文化的意識に照らしても,針供養等は,ペット葬祭と異なり,古くから行われてきた宗教的習俗として確立しており,両者を比較することは相当でない。

b 施行令5条1項5号ニや本件通達18は,人間の墳墓地経営の高い公共性・公益性を踏まえて政策的に収益事業から除外したものにすぎず,ペットの墓地について妥当するものではない。

c 神前結婚式等に係る本件通達71においても,一般事業者との競合の有無・程度が当然の前提とされていることは明らかであり,このことは,一般事業者との競合可能性がある披露宴における飲食物の提供等が収益事業とされていること,挙式という儀式自体については,国民の社会的・文化的意識に照らして一般的に宗教的色彩を有することが否定できず,お礼やおみくじと同様であると考えられることからも明らかである。原告の上記主張は,通達の字義を機械的にとらえて,この部分のみをいたずらに拡大解釈し,もって公益法人等の収益事業に関する法の趣旨を解釈するものであって,本末転倒である。

(ウ) 一般事業者の事業参入について

一般事業者と競合するような事業については,税務の公平上,課税対象とするという考え方からすれば,従前の経緯はどうであれ,これを非課税とするのは,法の趣旨に反するというべきである。

(2) 原告の主張

被告の主張は争う。原告の営むペット葬祭業等は,法2条13号,施行令5条1項各号所定の収益事業に該当するものではない。

ア 公益法人に対する課税制度

(ア) 税法解釈・運用の在り方

国民に義務を課し,その権利を制限することは国民の代表者によって構成される国会の定める法律によってのみ行われるべきであり,法律によらないで租税を課すことはできない(憲法84条の租税法律主義)。これは,国家財政の負担者である国民が自らその内容を決定するという民主主義からの当然の要請である。

したがって,その一内容として,租税が賦課される対象は,原則として法律で明記される必要があり,その範囲を政令等や解釈・運用等で安易に拡張することは厳に慎まなければならない。

(イ) 公益法人と収益事業

公益法人である宗教法人については,かつては宗教法人令が非課税としていたのと異なり,課税され得る法人とされたものの,原則は非課税であり,それに対する課税は収益事業すなわち施行令5条で限定列挙された33の特掲事業に限定されている(法7条,2条)。そして,租税法律主義の趣旨からして,たとえ収益事業であっても33の特掲事業に該当しない限り課税の対象とならないと解すべきであり,その解釈・運用は厳格になされなければならず,安易な類推解釈や拡大解釈は許されない。また,解釈の基準やペットに対する意識が社会通念に従わなければならないことは当然であるが,法令の解釈が社会通念に従うということは,宗教法人一般に対する非課税についての不公平感などの安易な感情によって規律されることを意味するものでないことも明らかである。

以上は,法人税法が,公益法人が本来的な公益活動をする場合には課税しないという基本原則を採用していることの現れである。すなわち,そもそも,公益法人が原則的に課税されないのは,公益法人が専ら公益を目的として設立され,営利を目的としないというその公益性と,たとえ収益事業を行ったとしても,そこから生じる利益は,株式会社における株主に対する配当のように,特定の個人に帰属する性質のものではないことによる。

だからこそ,法人税法は,公益法人の本来的公益活動に含まれ得るにもかかわらず形式的に収益事業に含まれる可能性のある公益活動を確認的意味で課税対象から排除しているし(例えば,施行令5条1項3号ニなど),人についての葬祭のように本来的な公益・宗教活動といえる事業については,収益事業に含めていないのである。

イ 被告の主張に対する反論

被告は,「本来の公益活動であっても,当該活動の公益性の有無・程度には着目することなく,一般事業者と競合するような事業については税務の公平上課税すべきものである」という理論(イコール・フィッティング論)を前提にして,①一般事業者の行う事業との類似性の有無・程度,②非課税事業との関係,③提供されるサービス・物品の性質・態様等の諸般の事情を,国民の社会・文化的意識を基礎とする社会通念に照らして判断すべきであると主張する。

しかしながら,上記主張は,実定法規の冷静な分析を怠ったまま独自の理念のみを強調し,公益法人課税見直しの議論に依拠するものであって,立法論的主張を解釈論の中に混在させているとの批判を免れない。

(ア) 宗教行為における対価性の欠如

宗教法人については,対価性のない所得については収益事業収入に該当せず,課税対象とされていない。その理由は,喜捨・布施・お礼が外形的には読経等の行為に対する対価のように見受けられるとしても,もともと,僧侶の供養は,布施という宗教行為のうちの法施といわれ,僧侶あるいは寺院に対する財物の施しは布施のうちの財施に当たり,いずれも宗教行為そのものであり,しかも,法施・財施は相手の財施・法施とは無関係になされるものである上,これらは魂の救済を目的とし,利益の追求を目的とするものではないから,両者の間に対価性を肯定することができないからである。

ところで,原告は,大乗仏教の1つである天台宗の末寺であるところ,大乗仏教においては,「一切衆生悉有仏性(全ての存在は皆仏性を有し成仏すべき存在である。)」,「六道輪廻(世界は,天上界,人間界,修羅道,畜生道,餓鬼道,地獄の6つに分かれており,すべての存在はこの六道を輪廻して転生している。)」という根本的な仏教観があり,ペットなどの動物は因果などによって畜生道にいるが,死後は読経等の供養による功徳によって本来の仏性が顕れ,天上界・人間界に転生することができると考えられている。したがって,ペットに対する読経等も宗教行為なのであり,さらに,森羅万象すべてのものに仏性があるという立場からすれば,人形や針などの物質についてさえ同様のことがいえる。だからこそ,針供養や人形供養は宗教的な意義を認められ,その多くが寺院において僧侶によってなされているのである。

また,ペットは単なる愛玩動物ではなく,伴侶動物であるとの認識が国民の間に一般化しており,そのような認識を背景として,ペットの供養も寺院で行いたいとの強い要請があり,それ故にこそ,一般事業者も宗教法人をまねて葬祭業を営んでいることからすれば,社会通念上も,ペットの供養と人の供養との間に差異はないというべきである。すなわち,布施の宗教的意義を度外視するとしても,ペットであっても愛するものを亡くし,家族を亡くしたのと同様な喪失感にさいなまれた飼い主は,僧侶による供養によって,ペットという愛する対象を亡くしたことを受容し,喪失感をいやし,感謝や哀悼の意を生ずるものであって,これらの点においては,人が亡くなった場合の供養とペットが亡くなった場合の供養とで変わりはない。

原告において行うペット葬祭については,とりわけ,ご本尊が動物愛護を勧めた徳川綱吉の守り仏といわれる薬師如来像であり,その経緯も純粋な宗教的意義から出たものであり,現在でも無償で動物の遺骨を引き取り,その霊を供養していることなどからしても,収益事業などではなく,純粋な宗教行為であることは明白である。

この点について,被告は,①ペット葬祭は読経等からなる一連のサービスであり,供養の部分をクローズアップすることは相当でない,②人の葬祭は業務内容が分断され,宗教法人が一括して行うことはない,③人の葬祭では,国民の社会的・文化的意識に照らして,読経等の供養は寺社が行うことにこそ価値があると考えられているなどと主張する。

しかしながら,そもそも,葬祭は,通夜・告別式・それらにおける読経・火葬・拾骨を含めた全体として,死というものを認識させ,喪失感を慰め,鎮魂するものであって,一体たるべきものであり,だからこそ,火葬に際しても読経による供養がなされ,拾骨・納骨にも僧侶が関与するのである。本来,葬祭においては,一連の行為の中で読経等の供養がなされることにその本質があり,供養に宗教的意義があるのであるから,供養の部分をクローズアップするのは当然である。人の葬祭においては,式場の手配等は葬儀会社が,火葬は地方公共団体等が運営する火葬場が,読経等の供養は僧侶がそれぞれ担当するように分断されているが,これは,住宅事情や墓地法によって,分断されざるを得ないにすぎない。

このような経緯からすれば,人の葬儀ないし供養とペットの葬儀ないし供養とを別のものと考えることは疑問である。また,人に対する供養はもちろん,ペットの供養も,僧侶が行うことにこそ価値があると一般にとらえられており,この点についてもペットの供養と人の供養とは異ならない。そうすると,人の供養とペットの供養を区別する根拠は存在しない。そして,人の葬祭の場合やペット葬祭であっても宗教法人の僧侶が民間のペット葬祭業者の依頼により民間業者の施設に赴いて供養する場合には課税対象となっていないことと比較すると,原告のペット葬祭業に課税することは,課税の公平原則に反して不当である。

また,被告は,原告の「料金表」を問題とするところ,確かに,原告は,お布施額について,当該動物の種類・大きさによって一定の金額を定めている。しかし,これは,ペット葬祭が国民の間に一般化されるようになってまだそれほど年月が経っていないため,人の葬祭と異なり,一般的な目安がなく,ペット葬祭を依頼する人がどの程度の布施をすればよいか困惑することがあることから,一般事業者の基準表を基に一応の目安を設定することによって,金額が多くないときちんと供養してもらえないのではないかという不安を取り除くことができると考えたためであり(実際,人の葬儀においても,お布施の目安を明示するお寺も存在している。),また,火葬において要する燃料費などは大きさによって違いがあり,ペットの大きさに応じて金額を異にする必要があることから,一般事業者の料金表を参考に基準表を作成したにすぎない。現に,この金額にこだわらずにお布施を支払われる方もあり,逆にわずかしかお金がないと言われる場合には目安を大幅に下回る金額(場合によっては全く無償)でもペット葬祭を実施している。

(イ) 一般事業者の事業参入を基準とすることの不当性

確かに,原告のペット葬祭業と一般事業者のそれとは,外形的に類似したところがあるが,これは,国民の一般的な社会的・文化的な意識から宗教的儀式によってペットの霊を送り,それによって自らをいやしたいという欲求に対応するため,一般事業者が宗教家による宗教行為をまねている結果にすぎない。原告のペット葬祭業においては,火葬前,火葬時,拾骨,納骨という一連の葬儀過程において読経による供養を行っているが,かかる一連の行為が宗教的意義を有しているからこそ,ペットの霊の鎮魂と飼い主の喪失感のいやしになっているものであり,これらの宗教的意義を有しない一般事業者のペット葬祭業とは決定的に異なる。

また,本件は,原告がその教義に基づいてペット葬祭業を本来的宗教活動として行っていたところ,ペットブームに便乗した一般事業者が名前や形式等を宗教法人の活動に似せて葬祭業を行い始め,その結果,競合関係が生じているケースであり,現行法規が想定した事態と全く逆のケースであるが,このような場合にまで,一般事業者との類似性・競合性の有無を基準とするイコール・フィッティング論に基づいて課税対象とするのは,立法趣旨に反し明らかに不当である。

(ウ) 非課税事業との比較

針供養や人形供養の際に依頼者から謝礼として受け取る喜捨に対しては課税されない取扱いであるが,僧侶が読経し,供養の対象が物である点でペット葬祭も同様であるにもかかわらず,後者が課税対象とされるのは不当である。

この点,被告は,①人形供養・針供養を事業として行っている一般事業者はない,②明確な料金設定がない,③古くから行われてきた宗教的習俗であるから,ペットの供養と異なる旨主張する。しかしながら,人形供養は人形協会等の関連業界やDなどの一般事業者も多数主宰し,その代金も3000円から5000円が一般的であって,明示もされているから,両者を区別する根拠は存在しない。

さらに,施行令5条1項5号ニの定める非課税の「墳墓地の貸付業」に関する本件通達18の解釈として,墳墓地の貸付業が宗教法人,財団法人又は社団法人によって行われるものは非課税であるが,これら以外の公益法人等によって行われる場合には収益事業課税の対象となるとされていることや,本件通達71が,「宗教法人が神前結婚,仏前結婚等の挙式を行う行為で本来の宗教活動の一部と認められるものは収益事業に該当しないが,挙式後の披ろう宴における飲食物の提供,挙式のための衣装その他の物品の貸付け,記念写真の撮影及びこれらの行為のあつせん並びにこれらの用に供するための不動産貸付け及び席貸の事業は,収益事業に該当することに留意する。」としているとおり,宗教法人がその本来の宗教活動として行う挙式行為は非課税とされる反面,宗教法人以外の公益法人等が神前結婚等の挙式を行う場合には,その挙式の部分についても,「請負業」として課税されると解されていることに現れているように,公益法人のうち宗教法人については,まさにその宗教活動の宗教的意義を尊重した解釈・運用がなされていることからすれば,当該活動の宗教的意義の有無・程度に着目することなく,類似事業の有無や民間業者との競合の有無によって収益事業性を判断しようとする被告の主張は不当である。

(エ) 個々の行為の特掲事業該当性についての反論

a 葬祭について

被告は,ペット葬祭が,読経のほか,追悼の儀式・死体の焼却等の一連の内容を含むと指摘し,国民の社会的・文化的意識に照らしても,寺社がこれを取り扱うことにこそ価値があるとはいえないと主張するが,伴侶動物ととらえられているペットの読経,火葬,火葬後の法要を事務処理であると評価することは,人の葬儀における読経,火葬,火葬後の法要を請負業と評価することと同様,国民の社会・文化的意識に反する。

被告が指摘する一般事業との類似性・競合性については,同事業が,ペット葬祭は宗教家によることに価値があるという国民の認識を背景として,本来は宗教家がなす供養の形態を模倣し,あるいは宗教法人と提携することによって,ペットの霊を供養しようとする飼い主の要望に応えようとするものであることからも,本末転倒した議論である。

仮に,被告が主張するように,読経等による供養を「請負」概念に含まれると解するならば,すべての無形の行為が請負に該当することになってしまうが,このような無限定な概念の拡張は,租税法律主義に反し,施行令5条の趣旨にも反する。

なお,原告が定めた「料金表」が一応の目安にすぎないことは前記のとおりであり,原告が受け取るお布施の金額は,本来,財施をする人の志次第である。

b 遺骨の処理について

原告は,納骨堂で,ペットの遺骨をお預かりしているが,これは保管自体が目的ではなく,ペットの霊の鎮魂が目的である。

被告主張のように,伴侶動物ととらえられているペットの遺骨を供養のため保管する行為を倉庫業と評価すること自体,国民の社会・文化的意識に反する。

すなわち,社会通念上,倉庫業は,寄託を受けた物を倉庫に保管する事業であるところ,寄託は寄託物の返還を当然に予定している。ましてや業として成立する場合には,頻繁に寄託物の出し入れをすることを想定している(商法597条以下)。これに対し,ペットの遺骨は永久に保管されることを予定しており,寄託・倉庫業の概念に該当しない。また,ペットの遺骨の保管は,保管すること自体が目的ではなく,保管した上で読経等の供養をすることが主たる目的であるから,やはり保管すること自体を主たる内容とする倉庫業の概念には当てはまらない。

なお,原告が受け取る管理費は,宗教法人である原告の維持発展のために護寺会費として受け取っているものであり,管理費との名目は,説明の便宜上のものである。

c 物品販売について

墓石や位牌は,そのままでは加工した石・木などの物質にすぎず,これが仏壇や墓地に設置され,お精入れという宗教的儀式が加えられることによって,はじめて鎮魂とおまいりの対象となる位牌・墓となるのである。したがって,仏壇業者が位牌を販売したり,石材業者が墓石を販売する場合とを同列に扱うことはできない。塔婆も塔を擬したものであって,極めて宗教性の強いものであり,僧侶等が仏文字を記入しなければただの木片にすぎず,原価的にも極めて安価なものにすぎない。石版は,ペット供養とは直接の関連性はない。

この点,被告は,お札・おみくじの頒布と異なる旨主張するが,これらは,「護符ないし占い(神仏のお告げ)」と理解されているところ,特に占いについては様々な占いが行われ,一般事業者も幅広く参入しているとおり,必ずしも神社仏閣が行うから尊く価値があると理解されているわけではない。それにもかかわらず,これらに対して課税されていないのは,宗教法人が宗教行為の一環(本尊たる神仏のお告げとして)として行われるからであり,それ以外の理由は見当たらない。

d 法要及び死体の引取りについて

法要は,一定の期日に読経等によって供養することにより故人や亡くなったペットを追悼し,鎮魂することであり,供養こそ法要の本体であって,アフターケアなどではないから,葬祭の付随的事業活動に当たらない。

ペットの遺体の引取りは,ペット葬祭に付随するものであり,供養行為と一体として考えるべきであって,これに伴って受け取る金員については実費以上の何ものでもない。


第3 当裁判所の判断

1 収益事業の意義とその判断基準

(1) 公益法人等に対する課税制度と宗教法人

ア 法4条1項は,法人税の納税義務者について,「内国法人は,この法律により,法人税を納める義務がある。ただし,内国法人である公益法人等又は人格のない社団等については,収益事業を営む場合……に限る。」と定め,法7条は,公益法人等の非収益事業所得等について,「内国法人である公益法人等又は人格のない社団等の各事業年度の所得のうち収益事業から生じた所得以外の所得……については,第5条(内国法人の課税所得の範囲)の規定にかかわらず,それぞれ各事業年度の所得に対する法人税…を課さない。」とそれぞれ規定している。

そして,公益法人等については,法2条6号により,「別表第2に掲げる法人をいう。」と定義されているから,これに該当する限り,その具体的活動内容などに関わりなく,法人税法上の公益法人等に当たることになる。また,収益事業については,法2条13号が「販売業,製造業その他の政令で定める事業で,継続して事業場を設けて営まれるものをいう。」と定義しているところ,施行令5条1項柱書は,「法第2条第13号(収益事業の意義)に規定する政令で定める事業は,次に掲げる事業(その性質上その事業に付随して行われる行為を含む。)とする。」と定め,1号から33号において,物品販売業,不動産販売業を含む33業種から成る特掲事業を掲げている。

したがって,公益法人等については,上記の収益事業に該当しない限り,その行う事業から得た収益に対して法人税は一切課税されないし,収益事業から得た収益についても,普通法人に対する法人税率が34.5パーセント(法66条1項。平成10年法律第24号による改正前は37.5パーセント)であるのに対し,公益法人等については25パーセント(前同27パーセント)の軽減税率が適用される(同条3項)上,寄付金の損金算入の特例も認められている(37条4項ただし書,施行令73条1項3号)ので,同一法人内部で非収益事業に支出をした場合の実効税率はさらに低下する。以上のほか,道府県民税,市町村民税,事業税,事業所税,不動産取得税,固定資産税,都市計画税(地方税法25条1項,72条の5第1項,73条の4第1項,296条1項,348条2項,702条の2第2項),消費税(消費税法60条4項,同法施行令75条),登録免許税(登録免許税法4条2項,同法別表第3)などにおいても,優遇措置が講ぜられている。

イ ところで,上記優遇措置については,公益法人等の活動における公益性にその存在理由を求めるのが一般的であるが,法人税法別表第2の定める公益法人等を概観すれば明らかなとおり,その内実は,公共法人(法2条5項,別表第1)に比肩すべきものから,単に構成員の福利や同業者間の相互扶助などを目的とするものまで,実に様々なものがあり,その有する公益性,公共性の強弱についても幅広いものがある。したがって,あえてこれらの共通点を探求するならば,せいぜい,営利を目的としない団体(非営利法人)としての性格を有する点を挙げ得るにすぎないとも指摘されている。

本件で問題となっている宗教法人について述べると,歴史的に見れば,近代社会においては国家が責任を持つべきものとされている社会福祉,教育の相当部分を宗教団体が担ってきたといわれているが,法人税法上は,宗教法人法(昭和26年法律第126号)に基づいて設立された宗教法人をいうと定義されている(別表第2)。そして,宗教法人法は,同法12条所定の事項を記載した規則の認証を同法5条の定める所轄庁(原則として都道府県知事,例外的に文部科学大臣)に対して申請し,その認証を得た後に設立登記をすることによって宗教法人が成立する(同法15条)と定めているが,所轄庁は,認証の可否を審査するに当たっては,当該団体が宗教団体であること等の要件の具備を判断するのみである(同法14条1項。もっとも,その運用においては,相当年月の実績を示すことが求められる。)。したがって,法文上は,宗教の教義を広めることなどを主目的とする団体であるならば,宗教法人たる資格を取得することが可能な制度となっているが,ここでいう宗教とは,一般には「超自然的,超人間的本質の存在を確信し,畏敬崇拝する心情と行為」というような広い意味に解されているから,その具体的な教義や活動内容が,その構成員やその属する社会の利益を現実に増進せしめるものであることは必ずしも要求されていないといわざるを得ない(そもそも,公権力がそのような審査を行うことは,信教の自由を保障した憲法20条に違反するおそれがあり,現に,宗教法人法25条5項,84条などは,公権力が,その事務を遂行する上で,宗教上の特性及び慣習を尊重し,信教の自由を妨げることがないよう特に留意すべき旨を定めている。)。

他方,宗教法人法上,宗教法人は,公益事業以外の事業から収益を得たときは,当該宗教法人,包括宗教団体又はそれが援助する宗教団体若しくは公益事業のために使用しなければならず,所轄庁は,これに違反する事実がある場合には,当該宗教法人に対して報告を求め,あるいは質問をすることができ,さらには1年以内の事業停止を命ずることができる(6条2項,78条の2第1項1号,79条)上,上記の事務が適正に行われることを担保するため,宗教団体は,毎会計年度終了後に財産目録及び収支計算書を作成して,これらを所轄庁に提出しなければならない(25条1項,3項,4項)とされている。

そうすると,上記のような超自然的,超人間的本質の存在を確信などする心情そのものが,人の精神に安らぎを与え得ることは否定できないものの,現行法上は,かかる意味での公益性,公共性を高く評価しているが故に税制上の優遇措置が講ぜられているというよりも,宗教法人が非営利法人であることを求められ,しかも,そのことを担保するために所轄庁による監督に服している点が重視されていると解することができる。

(2) 公益法人に対する課税制度の経緯

証拠(甲24,乙14,15)及び弁論の全趣旨によれば,公益法人に対する課税制度の経緯について,以下の事実が認められる。

ア 我が国における所得課税制度は,明治20年に制定された所得税法(明治20年勅令第5号)によって創設されたが,当時の納税義務者は個人のみであって,法人に対する課税は行われなかった。

その後,明治32年の所得税法改正(明治32年法律第17号)により,法人の所得に対しても1000分の25の税率により所得税を課することとされたが,公益法人については課税の対象外とされた(同法5条4項)。その根拠は,公益法人は専ら公益を目的として設立され,営利を目的としないというその公益性と,たとえ収益事業を行ったとしても,それから生ずる利益は特定の個人に帰属する性格のものではないと考えられたことにある。

そのため,大正9年の改正(大正9年法律第11号)や,法人税法の創設(昭和15年法律第25号)によって法人に対する課税制度の大変革が行われた際にも,公益法人等に対しては課税されないままであったが,昭和20年12月に宗教団体法が廃止されて宗教法人令(昭和20年勅令第719号)が制定されて初めて,収益事業を営む宗教法人については,その収益事業から生ずる所得について法人税を課税することとされた。

イ 戦後に来日したシャウプ博士を団長とする使節団は,昭和24年8月,日本の税制の在り方に関する報告書を公表したが,その中で,非課税とされている公益法人の多くが,「収益を目的とする活動に従事し,一般法人並びに個人と直接競争している……このような非課税法人の上げる利益金は,その活動をさらに拡張するかまたは饗宴のために費消されている」こと,「そのいずれもが,免税を正当化するためには極めて薄弱及び全く無価値なものである」ことなどを指摘した上,租税の全部又は一部を免除する場合には,その目的及び趣旨を法規中に具体的に規定すること,免税を要求しようとする一切の法人に対し,免税証明書の交付を大蔵省から受け取ることを要求すべきこと,3年ごとに免税の資格を審査すべきことなどの勧告を行った。

これを受けて昭和25年法律第69号により改正された法人税法においては,個別審査方式は,その困難性などの理由から採用に至らなかったものの,公益法人等の収益事業から生じた所得に対しては,法人税を課することとし,収益事業の範囲は政令で定めるというように,現行法と基本的に同じ形式が採用された。この改正の基本的な考え方について,当時の大蔵省主税局調査課は,「戦後の急激な物価騰貴のため,多くの公益法人は従来程度の収入を得ていたのでは本来の公益事業遂行の資金を賄うことが困難となったので,従来営利的事業を行わず,もっぱら一般の寄付金等によって事業を行っていた公益法人も新たに営利的事業を行うこととなり,また従来からの営利的事業も拡張する傾向が顕著になってきた。元来公益法人が営利的事業を行うのは,その本来の目的たる公益事業を遂行する上のやむを得ない手段たるべきであって,公益法人の行う営利的事業が本来の事業遂行を賄ってなお余りあるという段階に至ると,それは公益法人の行う営利的事業としては行き過ぎであるともいえるし,一般の営利法人の行う事業との間に,一方は法人税が非課税であり,一方は課税されるという関係から著しい不権衡を生ずるに至った。そこで公益法人に対する法人税課税問題が台頭するに至ったのであるが,その課税方法として,個々の公益法人の事業の内容により,その事業が非常に公共性が強いときはたとえ収益事業を行っても課税せず,また公共性に乏しいときはその事業の全部に対し課税するという方法も考えられた。しかしすべての公益法人についてその事業を精査し,公共性の強弱を判定することは事実上不可能に近いので,改正税法においてはすべての公益法人を一律に課税法人とし,その収益事業から生ずる所得に対してのみ法人税を課税することとしたのである。」と説明している。

(3) 収益事業概念の解釈の在り方

以上の検討結果によれば,法人税法等が公益法人等に対して種々の優遇措置を講じているのは,必ずしも,それら全部が,本来は国家が行うべきほどに公共性,公益性の高い活動を担っており,国家としてもかかる団体を積極的に支援,育成すべきと考えられたからではなく,少なくとも,人間社会において潤滑油に例えるべき一定の有用性を持った非営利活動を行うとされていることに着目し,国家としても,その限りにおいて税制上の便宜を提供しようとするものと解するのが相当である(このことは,宗教法人においても例外ではない。)。

したがって,法人税法は,およそ公益法人等であれば,どのような活動によって得た収益であろうと課税しないとする立場に立脚するものではなく,これらの法人等も納税義務者とした上で,本来の非営利活動については課税対象から外すこととするが,一般事業者が利益の獲得を目的として行っている事業と同じ類型の(収益)事業から生じた収益に対しては,これらに税制上の便宜を提供すべき根拠がなく,また課税の公平性の確保の観点から,低率ではあるものの,課税対象としていると解される(この意味で,一般事業者との競争条件の平等化を意味するイコール・フィッティング論が現行課税制度の根拠の一つとなっていることは否定できない。)。

そうすると,法2条13号,施行令5条1項各号の定める収益事業の概念は,憲法30条の定める租税法律主義の観点から,他の国法と整合する意味内容が与えられるべきことは当然であるものの,他方で,当該団体やその活動が高い公益性,公共性を有していることを理由に,制限的に解釈しなければならないものでないことも明らかである。


(4) 宗教行為と収益事業性の有無

この点について,原告は,仏教においては僧侶の行う法施と在家信者の行う財施は,いずれも宗教行為である布施に当たり,対価関係に立たないから,本来の宗教行為である限り,収益事業には当たらない旨主張する。なるほど,施行令5条1項の示す特掲事業は,これを通覧すれば明らかなとおり,一方がある給付行為を行うのに対し,その対価として財貨を移転することを約することによって成立する類型の事業であるから,財貨移転行為が給付行為の対価として行われない場合,すなわち給付行為の内容とは無関係に任意でなされる場合には,特掲事業の定型的な特徴を欠き,収益事業に該当しないというべきである。そして,人の葬儀における読経行為など,宗教行為の典型例とされているものにおいては,通常,かかる意味での任意性が存在すると考えられていることは公知の事実である(その場合に収受されるお布施には,ある程度の幅を持った世間相場というものが存在することは否定できないが,同じ内容の読経を行う場合でも,被葬者の身分,経済力等によってその金額が異なり得ることは当然視されているし,仮にお布施の金額が上記の世間相場より低額であったとしても,これが債務不履行として責任が追及されることは考え難いなど,法的な拘束力を有していると認識されていない。)。

しかしながら,このことは,当事者が当該行為に対して何らかの宗教的意義を感じさえすれば,直ちに当該行為の収益事業該当性が否定されるということを意味するものではなく,また,当該行為が宗教的な外形を呈していることや,主宰者が宗教家ないし宗教法人であることによっても,上記該当性が否定されるべきではない。ある行為に宗教的意義を感ずるか否かは,人によって大きく異なり得るし,宗教的な外形を呈しあるいは主宰者が宗教法人であるからといって,財貨移転が任意のものであることの保障は何もなく,法人税法上も,このような要素を基準として収益事業性の有無を判断する規定を置いていないからである。

したがって,その該当性の有無は,当該事業の展開の手法,収受される財貨の額が定まるに至る経緯,その額と給付行為の内容との対応関係,例外の許容性などの具体的諸事情を総合的に考慮し,一般事業者が行う類似事業と比較しつつ,社会通念に従って,果たしてその財貨移転が任意になされる性質のものか,それとも一定の給付行為の内容に応じた債務の履行としてなされるものかを判断して決せられるべきものである(前者と判断される行為をもって本来の宗教行為と定義するならば,原告の上記主張は正当というべきであるが,その趣旨が,当事者が本来の宗教行為と考えるものは前者と判断すべきであるというのであれば,採用できない。)。そして,このことは,本件で問題となっているペット葬祭業だけに妥当するものではなく,針供養や人形供養,おみくじ等の頒布などの宗教的行為にも当てはまるというべきである。

2 本件において,被告は,原告の行うペット葬祭業等は収益事業(請負業,倉庫業,物品販売業,これらの付随事業)に当たると主張するのに対し,原告は,その属する天台宗の教義やペットに対する国民の認識に照らすと,ペットの供養は,人の供養と同様の宗教行為であるから,ペット葬祭業は収益事業に当たらない旨主張するので,以下,その当否について判断する。

(1) 前記前提事実(1)ないし(3)に証拠(甲8,16,20の1ないし6,21,22,乙1,4ないし13,16ないし23,原告代表者)及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。

ア 原告は,嘉暦元年(1326年)ころ,慈妙上人によって開山され,その後は,同上人によって開山された密蔵院住職の隠居寺として利用されてきたと伝えられる古刹であり,最澄を開祖とし比叡山延暦寺を総本山とする天台宗に属していて,現在は,徳川5代将軍綱吉の守り仏と伝えられる薬師如来像を本尊としている。原告は,昭和44年10月28日,実質的に先代住職のEによって法人化されたが,平成6年10月31日,同人の死去に伴い,Aが代表者兼住職に就任した。

ところで,大乗仏教においては,「一切衆生悉有仏性」とか「六道輪廻」といった教義が示すように,すべての存在に仏性があり,現在は因果によって畜生道にいるとしても,功徳を積むことによって,天上界,人間界へ転生することができると考えられていることから,人間以外の動物に対する供養も否定されないところ,特に綱吉が,1687年から22年間にわたって,後に「生類憐れみの令」と総称される動物等の殺生や虐待を禁じた種々の法令を出し続けたことについて,かかる教義の影響が指摘されている。

イ 原告は,昭和58年ころ,Eが,知人である愛知県動物保護管理センターの所長から,処分した動物の遺骨等が放置されている状況を聞いたのを契機に,愛知県条例に基づく許可を受けて,動物の死体処理のための火葬場を設け,ペット葬祭業を始めた。もっとも,当初は特段の広告活動を行わず,専ら口コミに頼っていた上,それを必要とする国民の意識も希薄であったことから,依頼件数は1か月に2,3件程度であったが,ペットブームの隆盛に伴い,平成元年ころになると年間で犬・猫合わせて130件に増加し,お布施の合計額も74万6000円位となった(1件当たり平均5738円)。

原告は,元々檀家が少ないために,運営に苦慮することが多く,特に,昭和52年ころ,火災によってその本堂や庫裡などが焼失した際には,寺院の再建に大きな困難を伴ったが,ペット葬祭を開始した後は,徐々に運営が安定してきた。そして,現在では,かなり広範囲な地域から,ペット葬祭の依頼を受けるようになり,その数は,年間約2000件程度に達している。

ウ 原告が営むペット葬祭業の概要は,以下のとおりである。

(ア) 原告は,約3000坪の境内に,動物専用の火葬場(個別用及び合同用の2基),墓地(約30坪の穴を有する合同墓地と,区画された個別墓地から成り,後者には人間用に模した墓石を設置することができる。),納骨堂,待合室,駐車場を備え,引取りのための自動車を数台保有している。

(イ) ペットを亡くした飼い主が原告によるペット葬祭を行うことを希望する場合,まず,その死体を原告に持ち込むか,自動車で原告に引き取ってもらって運搬してもらうかを選択することになる。後者の場合,依頼者は,原告に対して3000円を支払うことを求められる。

(ウ) 葬儀は,火葬場に隣接するペット専用の葬式場において人間用祭壇を用いて僧侶が読経して行う。これが終了した後,死体を火葬に付すが,これには,以下のとおり,合同葬,一任葬(個別葬)及び立会葬の3種類がある

a 合同葬 依頼者は,葬儀終了後,併設火葬場において死体を原告に預けてお別れする。死体は,その日のうちに原告によって合同火葬され,合同墓に納骨される。

b 一任葬(個別葬) 依頼者は,葬儀終了後,併設火葬場において一時死体を原告に預ける。死体は,立会葬のない時間に原告によって単独火葬される。依頼者は,後に遺骨を引き取った上,納骨堂,単独墓(以上は有料),合同墓(無料)への納骨を選択することができる。

c 立会葬 死体は,葬儀終了後,直ちに併設火葬場にて単独火葬される。依頼者らは,この間,待合室にて待機し,焼却後,自ら拾骨する。納骨方法は,bと同様の選択が可能である。

なお,原告の発行するパンフレット又は開設しているホームページには,火葬・納骨方法について3種類の方法があることの説明とともに,別表2記載のとおり,動物の重さと火葬方法とを組み合せた金額表(8000円から5万円まで)が,「料金表」(乙6)ないし「供養料」(乙8)の表題の下に掲載されているところ,これは,Aが,愛知県T市所在の有限会社Fの料金表を参考にして作成したものである。また,同ホームページには,「上記は一式全てを含む費用です(引取・お迎え費用等は別)」との記載がある。

もっとも,同ホームページは,その後に改定され,本訴提起後である平成16年8月当時には,金額表は「お布施について」(乙23)の表題に代えられるとともに,「以下の費用には僧侶へのお布施が含まれます」との注記が記載されている。

(エ) 原告は,境内にペット専用の合同墓地と個別墓地を設置しており,上記のとおり,依頼者の希望に従い,個人墓,合同墓に埋蔵する。その際も,僧侶による読経がなされる。合同墓地の利用は,原告にペット葬祭を依頼した者については無料であるが,個別墓地については,年間2000円の「管理費」のほか,3年間の使用期間を3回更新した時(9年経過時)には,「継続利用料」1万円の支払を求められる。

また,納骨堂の利用を希望する場合は,「永代使用料」(小さめの納骨箱については3万5000円,大きめのそれについては同5万円)のほか,「管理費」として年間2000円の支払が必要であり,また,3年間の使用期間を3回更新した時(9年経過時)に「契約更新料」の支払が求められるのは,個別墓地と同じである。そして,3ヶ月以上管理費が納入されなかった場合は,中身一切と利用を含む権利を放棄したものとして扱われ,遺骨は合同墓へ埋蔵され,仏具も処分されることになっている。

なお,前記ホームページには,「合同のお墓は上記費用にて無料でお使いいただけます。また,納骨堂・石墓地(個別墓)などのご利用の場合でもお手ごろにご用意できます(下記参照)。B動物霊園では葬式後に護持会費などを請求することはありません。」などと記載され,さらに,それぞれの写真とともに,合同のお墓,納骨堂,石墓地の説明と費用(納骨堂は1区画3万5000円,石墓地は3万円より)が示されている。

(オ) 原告は,ペット葬祭業に関連して,次のとおり,物品の頒布をしている。

a 塔婆 1本1000円
b 位牌 作成費5000円。なお,これを年間5000円で預かるが,3ヶ月以上管理費を納入しなかった場合は位牌・利用利益を放棄したものと扱う。
c ネームプレート,骨壺,袋,石版及び墓石

(カ) 原告は,毎月17日に合同の法要を行っており,これについては,任意の志以外の金員が収受されることはないが,遺骨を納めた飼い主からの依頼に基づいて,初七日法要や七七日法要を行う際には,あらかじめ定められた金員を受け取っている。

(キ) 原告は,「B 動物霊園」の名称を用いて,ペット葬祭業のあらましを写真入りで説明したパンフレット(甲16,乙6)を発行し,同様の内容のホームページ(乙8,23)を開設するなど,その周知に努めている。また,動物病院や獣医師からペット葬祭の希望者を紹介してもらった際に謝礼金を渡したり,紹介を依頼するために中元等を贈ることもしている。

(ク) 原告は,ペット供養による収入金額について記帳した平成8年4月以降の帳簿を保管しているところ,その概要欄は,ほとんどペットの種類の記載しかなく,収入金額の内訳の記載もないが,その収入金額がいずれも料金表の金額又はこれに運搬料を加えた金額に合致していることから,ペット葬祭依頼者のほとんどが,「料金表」ないし「供養料」として掲示された金員を原告に支払っていると推測される。また,それ以外の管理費等は,すべて掲示されている金額が入金されている。

エ 動物,特に家畜を死なせた場合に,それを供養することは,日本においては,古くから見受けられるが,ペットについての供養や葬祭を行うことは,昭和50年代くらいから広まり始めたといわれている。

その背景としては,少子化傾向が進み,ペット動物を家族と同様の愛情を注ぐ対象と考え,その死亡の際には空虚感を埋め,精神的ないやしを求める風潮が強まったことが挙げられる。その結果,ペット専用の葬儀や動物霊園を取り扱う事業者が増加し,平成11年には,これらの情報を提供することを目的とする「全国ペット霊園ガイド」が発刊され,平成14年には,ペットに関するビジネス全体の概要を内容とする「図解で分かる1兆円市場 ペットビジネスのすべて」が発刊され,その中で,「ペットの終末ビジネス」の表題の下にペット葬祭業についても解説が施され,平成16年4月には,寺院運営に関する月刊誌「寺門興隆」が,「ペット供養寺院」についての特集記事を掲載し,山梨県T市の曹洞宗G,東京都S区の日蓮宗H及び原告の3例を紹介する(もっとも,前2者は,宗教法人とは別個に会社を設立し,同社がペット葬祭業を営む形態を採用しているところ,その概要は,後記のとおりである。)など,ペット葬祭業への一般的な関心の高まりが見られる。

現在では,ペット専用の葬儀社は全国で6000ないし8000社あるといわれ,その事業主体は,仏教寺院だけでなく,倉庫業,運送業,不動産会社(出資),石材店,動物病院などの民間業者にも広く及んでいる。

オ 原告以外にペット葬祭業を営む者として,以下のような具体例が挙げられる。

(ア)埼玉県T市所在の「I」では,動物愛護家から連絡を受けると,霊柩車で引取りに行き,焼却から葬儀セレモニー,埋蔵までを行うが,火葬して共同埋蔵する場合は,依頼者は,小型中型犬の場合は1万9000円,大型犬の場合は2万4000円,猫やウサギの場合は1万5000円,小鳥の場合は5000円をそれぞれ支払わねばならない。なお,立会葬では,希望する宗派の読経テープが流れるが,別途に3万8000円の支払を要する。

(イ)山梨県T市所在の有限会社「J」は,曹洞宗Gの住職が設立したもので,移動用火葬炉やペット用合同慰霊碑,納骨堂を備え,火葬には一任合同葬,一任個別葬及び立会葬の3種の中から選択でき,これと動物の大きさの組み合わせによって料金が異なり,中型犬の場合は合同葬で1万9000円,一任個別葬で2万4000円,立会葬で3万9000円と定められているが,これには,引取費用,棺桶や骨壺等の料金が含まれている。立会葬では,僧侶が20分ほど読経する。合同葬の場合,遺骨は合祀スペースに埋蔵するが,その料金は5000円であり,個別葬及び立会葬で返骨を希望する場合は,1万円の追加支払が必要である。納骨堂へ安置する場合は,仕切のない棚は1万円,それ以外は納骨箱の大きさに応じて3万円,5万円,7万円,10万円と料金が設定され,納骨から3年経つと,合同慰霊碑に合葬するか,5000円の更新料で3年間継続するかを選択する。

(ウ)東京都S区所在の株式会社Kは,日蓮宗Hが母体となって設立した株式会社で,以下の3つのコースを用意している。①立会葬は,飼い主が同席し僧侶による読経ともに行う告別式とお別れの儀の後火葬し,骨揚げ後は骨壺に入れて返骨するコースであり,中型犬の場合の料金は6万2500円である。②個別一任葬は,動物の遺骸を一体づつ供養・火葬し,同じく返骨するコースであり,中型犬の場合の料金は3万8800円である。③合同葬は,何体かまとめて供養・火葬し,合同墓所の地下に埋蔵するコースであり,中型犬の場合の料金は2万6700円である。そして,合同葬以外は,別料金で納骨棚に安置でき,棚の大きさに応じて,2年間で2万5000円から5万5000円までの使用料が設定されている。

(エ)岐阜県H市所在の有限会社Dは,僧侶の立会い・読経による葬儀の後,合同火葬するか個別火葬するかの選択と動物の重さ(極小,10キログラムまでの小,15キログラムまでの中,30キログラムまでの大,30キログラムを超え40キログラムまでの特大)の組み合わせに応じて,7000円から5万円までの志納料が設定されている。法要については,単独供養か否か及びその回数に応じて,2万円から10万円まで志納料が異なり,納骨についても,納骨塔への収納(無料),墓への埋蔵(有料),位牌供養(一部有料)かを選択することができる。

(オ) 愛知県T市所在の有限会社Fは,原告の行う葬儀・火葬と同じ方法を用意し,原告と同様に,合同供養・合同火葬,個別供養・合同火葬,個別供養・個別火葬の別と動物の重さの組み合わせに応じた料金表を用いている。そのホームページには,その業務内容はペット葬祭業であり,契約先は動物菩提寺宗教法人妙楽寺とされ,その住職による読経が個別供養等の際になされることが記載されている。

(2) 以上の認定事実を基に,原告のペット葬祭業等が特掲事業に該当するか否かについて判断する(原告のペット葬祭業が,収益事業性の他の要件,すなわち継続性や事業場の設置の要件を満たすことは明らかである。)。

ア 原告の行う合同葬,一任葬及び立会葬の請負業該当性の有無

(ア) 請負契約とは,当事者の一方がある仕事を完成することを約し,相手方がその仕事の結果に対して報酬を与えることを約する契約であり(民法632条),請負契約の目的たる「仕事」とは,物の製作のような有形のものでも,運搬のような無形のものでもよいが,いずれにしても仕事の完成によってもたらされる結果そのものが契約の目的とされる必要がある。また,施行令5条1項10号の請負業に含められている事務の委託契約(準委任契約)とは,当事者の一方が法律行為以外の事務をなすことを相手方に委託し,相手方がこれを承諾することによってその効力を生ずる契約であり(民法656条,643条),受任者にある程度の自由裁量権がある点で雇傭契約と異なり,委託された事務を処理すること自体を内容とし,仕事の完成を内容としない点で民法上の請負契約と異なっている。そして,民法上の準委任契約は無償契約であることを原則とするが,特約によって報酬支払を約することもできるところ,特掲事業は収益事業が列挙されたものであるから,報酬の支払が合意され,受任者はその支払請求権を取得することが要件となると解される。

しかるところ,前記認定事実ウによれば,原告が行う合同葬,一任葬及び立会葬は,いずれも,原告がペットの葬儀を執り行い,ペットの死体を焼却することを約し,他方,ペット供養希望者が「料金表」ないし「供養料」の表題が付された金額表に記載された金員を交付することを約しているのであるから,死体の焼却については請負契約,それ以外については準委任契約の成立要件を充足すると解される。

(イ) この点について,原告は,①大乗仏教においては,その教義上,ペットなどの動物に対する供養は本来的な宗教行為であること,②僧侶の供養は,布施という宗教行為のうち法施であり,僧侶あるいは寺院に対する財物の交付は布施のうち財施であり,いずれも宗教行為そのものであって,両者は対価関係に立つものではない旨主張するところ,請負契約であれ報酬支払の特約付き準委任契約であれ,いずれも有償双務契約たる性質を有するから,これらの契約が成立するためには,報酬支払債務と仕事を完成させる債務ないし事務を処理する債務とが対価関係にあることを要することは明らかである。そして,証拠(甲12の1ないし57,20,21)によれば,原告にペット葬祭を依頼する者の多くが,そこに何らかの意味の宗教的意義を見いだしていると認められ,原告も,本来の宗教行為である人の葬祭の形式を踏んでペット葬祭を執り行っていることは明らかである。

しかしながら,前記のとおり,法人税法上の特掲事業該当性は,当事者が当該行為に宗教的意義を見いだし,あるいはその外形を取ることによって直ちに否定されるべきものではなく,これを取り巻く具体的諸事情をも総合的に考慮し,一般事業者の類似事業と比較しつつ,社会通念に従って,財貨移転が任意になされる性質のものか否かを判断して決せられるべきものである。しかるところ,原告のペット葬祭業は,前記認定事実ウないしオのとおり,「料金表」ないし「供養料」の表題の下に,3種類の葬儀内容と動物の重さの組み合わせに応じた確定金額から成る表を定め,ホームページにも同様の表を明示的に掲載していること,ペット葬祭依頼者のほとんどが,あらかじめホームページなどを通じ,あるいは依頼時に同表を示されるなどして同表の存在を認識し,実際にも同表に記載された金員を支払っていたこと,ペット葬祭を実施する民間業者が多数存在しており,その料金システムは原告のものと極めて類似していることなどに照らせば,原告のペット葬祭業においては,依頼者は,原告がその支払う金員に対応する葬祭行為をするものと期待し,原告も,その提供する葬祭行為に対応する金員が支払われるものと期待しているというべきであるから,依頼者の支払う金員が任意のものであるとは到底解されず,両者の間に対価関係を肯認するのが相当である。


原告は,さらに,「料金表」を設けたのは,ペット供養が国民の間に一般化されるようになってまだそれほど年月が経っていないため,金額が多くないときちんと供養してもらえないのではないかという国民の不安を取り除くべく,一応の目安として設定したものにすぎない旨主張するが,国民が上記のような不安を抱いている
ということ自体,その裏返しとして,支払う金額の多寡に応じた葬祭行為(サービス)がなされることを当然視していると考えられる上,そもそも,前記「料金表」には,3種類の葬儀形式と6段階の重量等を組み合わせた18の確定金額が明示されており,また,パンフレットやホームページには,同表の金額が一応の目安にすぎない旨の注記が記載されていないことなどに照らすと,原告の上記主張は,到底採用できない。

イ 遺骨処理の倉庫業ないし請負業該当性の有無

(ア) 倉庫業とは,業として(有償かつ継続して),他人のために物品を倉庫に保管することを意味する(商法597条)ところ,倉庫とは,その名称のいかんを問わず,物品の滅失若しくは損傷を防止するための工作物又は工作を施した土地等であって,物の保管の用に供するものをいう(倉庫業法2条1項)。

しかるところ,前記認定事実ウによれば,原告は,火葬したペットの遺骨を,利用者の依頼に応じて,設置している納骨堂内の納骨箱において保管し,その使用許可料及び管理費の支払を受け,9年の使用期限が到来した際は,更新料の支払がなされればそのまま保管を継続するが,そうでない場合は,合同墓へ改葬するとしているのであるから,倉庫寄託契約の成立要件を満たすと解される。また,個別墓地についても,その利用者の依頼に応じて墓地を管理し,利用者から一定額の管理費の支払を受け,9年の使用期間が経過すれば,納骨堂の使用とほぼ同じ取扱いをするというのであるから,報酬支払特約付きの事務委託契約の成立要件を満たすというべきである。そして,上記のとおり,原告の行うものとされている給付行為と金員の支払との間の対価性も優に認められる。


(イ) この点について,原告は,①永久保管が前提となっていること,②寄託物の出し入れが予定されていないこと,③寄託期間に応じて費用が決定されていないこと,④管理費は「護持会費」であることなどを理由に,倉庫業等に該当することを否定する。

しかしながら,典型的な倉庫業においても,保管期限を定めない契約形態は十分にあり得る上,本件において,仮に納骨堂利用者から遺骨の返還を求められれば,原告がこれを拒絶する理由は見当たらないばかりか,逆に管理料や更新料の支払がない場合には,納骨堂の利用を拒絶されて,遺骨は合同墓地に改葬されることになっているから,①や②は,倉庫寄託契約の類型に当たることの支障となるものではない。また,上記のとおり,寄託期間や管理期間に応じて管理費が定められていること,原告のホームページで護持会費を請求しないと明言していること(これに関する原告代表者の説明は理解し難い。)などからすれば,上記主張はいずれも採用できない。

(ウ) なお,施行令5条1項5号ニは,「墳墓地の貸付け」が収益事業に該当しない旨定めているが,本件のような個別墓地におけるペットの遺骨の埋蔵がこれに該当しないことは明らかである。すなわち,税法上,「墳墓地」の意義は明定されていないが,墓地法は,2条4項で「死体を埋葬し,又は焼骨を埋蔵する施設をいう」と規定しているところ,ここにいう死体ないし焼骨が人間のそれを指すことは疑う余地がないから,「墳墓地」も人間に関するものに限られると解される上,実質的にも,墳墓地が,周辺住民の生活環境との関係で配慮が求められる一方,国民生活にとって必要な施設である(墓地法4条1項により,人の遺骨は墓地に埋蔵することが義務付けられている。)ことから,その永続性と非営利性を確保する必要性が高いのに対し,ペットの死体の処理については,現行法上,特段の規制はなく,法的には「廃棄物」として,市町村が処理すべき性質のものであるから,人についての墳墓地と同様の公共性,公益性は見出し難いからである。

ウ物品販売業該当性の有無

(ア) 施行令5条1項1号の「物品販売業」とは,動産である物品を有償かつ継続して販売することを意味すると解されるところ,前記認定事実ウのとおり,原告は,ペット葬祭業に関連して,塔婆,プレート,骨壺,袋,位牌,石版,墓石を交付し,これに対して,あらかじめ定められた一定額の金員を受領しているのであるから,これらの行為は,物品を有償かつ継続して販売しているものに該当する。

(イ) この点について,原告は,墓石や位牌は,そのままでは加工した石・木などの物質にすぎないのであり,これが仏壇や墓地に設置され,お精入れという宗教的儀式が加えられることによって,はじめて鎮魂とお祭りの対象となる位牌・墓となるのであり,また,塔婆も塔を擬したものであるなど,極めて宗教性の強いものであるから,一般事業者の販売と同視することはできない旨主張する。

しかしながら,前記のとおり,法人税法は,宗教的意義の有無,強弱を特掲事業該当性の判断基準とする立場を採用していないところ,本件においては,支払うべき金額は,あらかじめ原告によって定められており,同物品の取得を希望する者としては,同金額を支払う以外の途を選択することができないことや,このような物品の販売は,一般事業者においても行われていることなどに照らせば,その支払は任意の性質を有するものではなく,両者間に対価性が存在すると認めることができるから,原告の上記主張は採用できない。

エ 死体引取り及び法要の請負業付随事業該当性の有無

(ア) 前記認定事実ウのとおり,原告は,ペット葬祭を依頼した者の希望によって,ペットの死体の引取りを行い,これに対して,あらかじめ定められた3000円の支払を受けているところ,この行為は,ペットの葬儀を執り行うに先立って,その準備行為として行われることが明らかであるので,その付随的事業活動に該当すると解される。

原告は,ペットの供養行為と一体として考えるべきであり,受け取る金員も実費にすぎないと主張するところ,本件におけるペットの供養自体が請負業に当たると解されることは前記のとおりであり,また,あらかじめ3000円という確定金額が定められている以上,仮に引取り自体からは収益を上げることが稀であったとしても,両者間における対価性の存在を否定することはできないというべきである。

(イ) また,前記認定事実ウによれば,原告は,合同供養については,志以外の金員を受け取っていないものの,遺骨を納めた飼い主からの依頼に基づいて,初七日法要や七七日法要を行う際には,あらかじめ定められた金員を受領しているところ,このような行為は,請負業に該当すると解される。

オ人間用墓地管理の請負業該当性の有無

前記認定事実ウのとおり,原告は,愛知県G市内に人間についての墓地を設置し,その利用者から依頼を受けて管理し,その対価としてあらかじめ定められた料金を取得しているところ,このような行為は,通常の霊園墓地経営と同様であるから,10号の請負業に該当すると解される。

3 本件課税処分の適法性

本件各事業年度における原告のペット葬祭業等による収入金額,事業経費及び法37条4項(平成14年法律第79号による改正前のもの)所定の寄付金の額とみなされる金額は,それぞれ別紙3の当該欄記載のとおりである(原告は,同各金額を明らかに争わない。)ところ,これらに基づいて所得金額を計算し,さらに関係法条を適用して納付すべき法人税額及び無申告加算税の額を算出すると,別紙3の当該欄記載のとおりとなる。

しかるところ,本件課税処分(ただし,平成14年10月18日付け異議決定及び平成15年10月28日付け裁決によって一部取り消された後のもの)により原告が納付すべきこととなった法人税額等は,これと同額か又はこれを下回っているから,同処分は適法というべきである。

4 結論

以上の次第で,原告の本訴各請求はいずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき,行訴法7条,民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。

名古屋地方裁判所民事第9部

裁判長裁判官    加  藤  幸  雄
裁判官    舟  橋  恭  子
裁判官    尾  河  吉  久

(別表及び別紙はいずれも省略)