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原審:名古屋地方裁判所
原審事件番号:平成13(ワ)4539
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平成15年1月24日判決言渡 同日判決原本交付 裁判所書記官
平成14年(ワ)第14626号損害賠償請求事件
口頭弁論終結日 平成14年12月13日
判 決
主 文
1 被告は、原告に対し、金82万2580円及びこれに対する平成13年12月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用はこれを3分し,その1を原告の,その余を被告の負担とする。
4 この判決は,第1項に限り仮に執行することができる。
事実
第1 当事者の求めた裁判
1 請求の趣旨
(1) 被告は原告に対し,金111万3046円及びこれに対する平成13年12月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
(3) 仮執行宣言
2 請求の趣旨に対する答弁
原告の請求を棄却する。
第2 当事者の主張
1 請求原因事実
(1) 原告は,平成13年12月2日午後4時15分頃,i 区a丁目にあるb公園(以下「公園」という。)内の通路を自転車に乗って通行していたところ,突然公園内から被告所有の大型犬が飛び出してきて,原告の自転車と衝突した。
(2) 飼い犬を公園内で際歩させる際には,むやみに犬が飛び出さないように手綱を付けるなどの必要な注意を払うべきところ,被告は,公園内で飼い犬に手綱をつけずに公園内を自由に走らせるなど放任した結果,(1)の衝突を起こしたものである。
(3) このため,原告は自転車とともに転倒し,左大腿骨骨折などの傷害を受け,同月3日から平成14年1月22日まで通院して治療を受けた。これにより生じた損害は以下のとおりであり,その合計は,111万3046円であるる。
ア 治療費 1万2270円
イ 慰謝料 50万円
原告は,上記傷害の治療のため,上記期間通院して治療を受けた。この期間中は,痛みから日常の歩行や日常生活の制限を受けた。また,被告は,治療費すら支払おうとせず,原告の請求に対しても誠実に対応していない。これらの事情を考慮すれば,その精神的苦痛に対する慰謝料は,50万円が相当である。
ウ 休業補償 40万0776円
原告は主婦であるが,上記傷害のため上記治療期間中,主婦として満足に家事に従事することはできず,主婦としての労働は著しく制限された。平成12年度の賃金センサス女子労働者65歳以上の平均年収は286万8300円である。
計算式:2868300÷365×51=400776
エ 弁護士費用 20万円
(4) よって,原告は,被告に対して,民法709条及び718条の不法行為に基づく損害賠償請求として,金111万3046円及び不法行為日である平成13年12月2日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払いを求める。
2 請求原因事実に対する認否・反論
(1) 請求原因(1)のうち,原告が,公園の通路を自転車に乗って通行していたことは認めるが,被告所有の大型犬と衝突したことは否認する。
なお,被告が通行していた通路は,自転車は乗り入れ禁止の通路である。
(2) 請求原因(2)は,否認する。
被告は,直前まで手綱をもっていたが,犬が驚いて逃げ出したものであり,自由に公園内を走らせていたものではない。
(3) 請求原因(3),(4)は,知らない。
第3 証拠
書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから,これを引用する。
理 由
1 請求原因(1),(2)について
(1) 甲4号証及び原告本人尋問の結果によれば,平成13年12月2日午後4時15分頃,原告が,公園内の通路を自転車で走行中に,手綱をつけていなかった被告所有の大型犬(ゴールデンレトリバー)が原告の自転車に衝突して,原告が転倒した事実が認められる。
なお,被告は,原告が自転車で走行していた通路は,自転車での通行が禁止されていたと主張するが,甲3,4号証によれば,この通路はサイクリングコースと表示されていたことが認められる。また,甲3,4号証及び原告本人尋問の結果によれば,公園には,被告の他にも犬を連れてきている人が多くいたことが認められるが,公園内には「犬の放し飼いは禁止です」との掲示板があったことが認められる。
(2) 被告は,犬が驚いて逃げ出したので衝突したと主張するが,甲3,4号証及び原告本人尋問の結果によれば,衝突地点は,原告が公園内に進入して間もないところであったと認められ,原告が被告の所有する犬を驚かしたものとは認められないから,仮に被告の主張のとおりとしても,これにより被告の責任が軽減されることはない。また,被告が,その所有する犬を公園内で自由に走り回らせていたかは不明であるが,動物の占有者は,動物の種類及び性質に応じて相当の注意をもって保管したことを証明しない限り,その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を免責されないから,手綱をつけていなかったと認められる以上,本件において被告の責任が免責されることはない。
(3) よって,請求原因(1),(2)は認められる。
2 請求原因(3),(4)について
(1) 甲1,4号証及び原告本人尋問の結果によれば,原告は,上記衝突により転倒して,頸椎捻挫,左大腿骨骨折,左肘挫傷の傷害を負い,これにより,平成13年12月3日からA整形外科に通院し,平成14年1月22日に上記傷害は治癒したことが認められる。
(2) 甲2号証の1ないし9,4号証及び原告本人尋問の結果によれば,事故後約2週間は自宅でゆっくり静養しており,家事は原告の夫が行っていたが,事故後1週間で,通院は病院が自宅に近いこともあり,自転車で行くようになったこと,事故後平成13年12月21日までに7回通院したが,その後は平成14年1月22日及び同年2月28日に通院したのみであること,普通の生活は事故後2週間程度たった後から可能になり,正月明けには家事などを行える程度にまで快復したことが認められる。
この事情に基づき,原告に生じた損害を算定すると以下のとおりであると認められる。
ア 治療費
甲2号証の1ないし9によれば,1万2270円であることが認められる。
イ 休業補償
上記の認定によれば,原告は,平成13年12月3日から平成14年1月22日までの間,この期間全体を通してみれば,その労働能力の4割を喪失したものと認めるのが相当である。よって,休業補償の額は16万0310円であると認められる。
計算式:2868300÷365×51×0.4=160310.4(小数点以下切り捨て)
ウ 慰謝料
上記の認定及び事故後被告が謝罪を十分にしてこなかったことを考慮すれば,慰謝料額としては50万円が相当である。
エ 弁護士費用
本件と相当因果関係のある弁護士費用は,15万円であると認められる。
(3) 以上によれば,被告が原告に賠償すべき金額は82万2580円である。
3 以上の次第で,原告の請求は,82万2580円及びこれに対する本件不法行為日である平成13年12月2日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払いを求める限度で理由があり,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条,64条本文を,仮執行宣言につき259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所 民事第48部
裁判官 鳥 居 俊 一