平成15年3月18日青梅簡易裁判所判決・平成15(ハ)34[診察費・診断書費用として約7万円、慰謝料として3万、合計約10万円を認容]


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          主          文

1 被告は原告に対し,金10万1600円及びこれに対する平成14年8月5日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用はこれを2分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。

事実及び理由

第1 請求
 被告は原告に対し,金20万円及びこれに対する平成14年8月5日から支払済みに至るまで年5パーセントの割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
一 請求の原因  
1 原告が,平成14年8月4日昼の12時頃,F市内のペットセンターW代表B氏に愛犬プーちゃんを預け,翌5日15時頃引き取りに行ったところ,犬が右前足を痛がり,地面に着くことができない状態になっていた。
 預ける前は,そのような状態なっておらず,B氏に過失があると思われる。
 その後,数回B氏に電話をしたが,まったく話し合いにならず,すぐ切られてしまい,誠意がなく,いっこうに支払おうとしない。
 2 損害の内訳
 T動物総合病院   8月5日             5000円
 F動物病院     8月10〜16日       5万4400円
 O犬猫病院    8月20日,25日,9月4日  1万0200円
 同診断書料                      2000円
 以上計                      7万1600円
 慰謝料                     12万8400円

二 被告の主張
  平成14年8月4日午後12時ころ,原告と他男性1人がペットを預けに来店した。初めての客なので総体をチェックしてゲージに入れようとしたところ,前足を床につかなかったので不思議に思い,2人聞こうとしたが,既に自動車で出ていってしまっていた。
 次の日に話をするつもりでいたが,翌5日に2人が来店した時は,昨日の今日なのでリードをつけて犬を歩かせたところ,ピョンピョンはねて20m位走り,痛みは感じないようであった。(犬は深爪や骨折,打撲がある場合はオーバーで騒いだり,動かない場合が多い)それ故,痛みが無いということは古傷だと思った。心ある獣医は分かる筈である。
 預かったペットは,ゲージに入れ,出し入れすることなく,ゲージと通路の間は60cm位しかなく,被告が立ってゲージを開けてもペットを落とすようなことはないし,落とした覚えもない。
 電話に関しては,上記の様な状態を話しても話し合いにならないので,電話はいやがらせと思い,切ったものである。

三 争いのない事実
 原告が被告に平成14年8月4日から5日までペットの犬を預けた事実

四 争点 
 1 被告の責任の有無
 2 原告の損害額

第3 争点に対する判断
一 争点1について
 弁論の全趣旨及び証拠(原告本人の供述及び甲1乃至3号証)によると,下記の事実が認められる。
 原告は,本件の犬(ミニチュアダックスフンド)1頭を平成11年12月頃ブリーダーから8万円で購入した。
 原告は,被告の営業をタウンページで探して,電話で料金等を問い合わせたところ,1日2500円,日曜日も預かるということであったので,預けることとし,最初は1日だけの約束で,本件の犬を,平成14年8月4日の昼の12時に被告に預けた。ところが,被告の所が,5時か6時で閉まってしまうため,原告は,都合により引き取りに行けなくなり,電話で被告に連絡をして,翌5日の午後3時まで被告に本件の犬を預けた。原告は被告に対し,その料金5000円を支払った。
 本件の犬は,被告に預けるまでは,何の異常がなかった。しかるに,5日に原告が被告から本件の犬を受け取る時は,右前足を地面に着くことができず,3本の足でしか歩くことはできなかった。
 被告が原告に「前に骨折したことはないか」と聞いたので,原告が「したことはない」と答えると,被告は「このおかしいのは,昔の骨折のせいである」と言っていた。
 原告は,動物病院を知らなかったところ,被告から,被告がよく利用しているし,安いと,教えられたT動物総合病院に行くことを決め,即日,車で10分位のところにあるT動物総合病院に行き,本件の犬の診察をして貰った。T動物総合病院で,通しという方法で診察をした結果,打撲傷と診断され,注射を2本打たれ,2,3日で良くなるから,しばらくの間様子を見ているようにとの指示をされた。原告は,T動物総合病院にその料金5000円を支払った。
 原告は,しばらく本件の犬の様子を見ていたが,ずっと3本足で歩く状態で,良くならないので,8月10にF病院で診察して貰うと右前肢上腕骨遠位部骨折と診断され,8月10日から16日まで本件の犬を入院させた。原告は,その料金5万4400円をF病院に支払った。
 F病院では,この怪我は最近のものである。昔のものならば,固まってしまっていると言われた。
 原告は,F病院で本件の犬が骨折との診断を受け,その入院中に,被告に対して電話でその様子を連絡したが,被告は「前からそうなっていたので,うちとは関係ない」と言って,話し合いに応じることなく,直ぐ電話を切ってしまった。本件の犬の退院後に,原告が被告に対して電話をした時も同様であった。
 原告は,実家のあるT市に行き,8月20日,26日,9月4日の3回O犬猫病院で診察して貰った。原告は,O犬猫病院にその料金1万0200円と診断書料金2000円を支払った。
 前記認定の事実によると,本件の犬の骨折した時期は,被告が本件の犬を預かっていた間であるとの事実が推認でき,また,被告は,犬を預かることを営業としており,その業務に関しては,一般人よりも高度の注意義務を負っていると認められ,被告は,その業務に関して注意義務を怠ったとの事実が推認できる。
 してみると,被告は,本件の犬の骨折につき責任を有するものと認められる。

二 争点2について
 前記認定の事実によると,原告は病院での費用及び診断書料として,計金7万1600円の損害を被った事実が認められる。
 また,前記認定の事実よりすると,本件の慰謝料の額は金3万円をもって相当と認められる。

第4 結論
 以上によると,原告の本件請求は金10万1600円及びこれに対する遅延損害金の範囲で理由があり,その余は理由がないので,主文のとおり判決する。

青 梅 簡 易 裁 判 所
裁 判 官     栗 林 道 昌